量子物理学分野
量子論は電子や電磁場などに適用され、これまで多くの実験を矛盾なく説明し、多くの「もの」の振る舞いと関わってきました。一方、量子論誕生以来、そもそも量子論は何故このような形をしているのか、量子論と古典論の違いは何か、など「もの」に依らず、量子論そのものの普遍的な様相を数理的に探る研究も行われてきました。当研究室では、量子論の本質的な特性(量子性)とは何かを探り、量子性を用いると何ができるのかといったことを考えています。
教員
宮寺 隆之 ( Takayuki MIYADERA )
教授(工学研究科)
研究テーマ
「量子論の特徴とは何か」「量子論の特性(量子性)を使うと何ができるのか」「なぜ世界は量子論で記述できるのか」 このような疑問に答えるべく、量子論の基礎、量子情報理論、量子測定理論などについて研究しています。
主な担当講義
量子物理学1、量子物理学2、核物理基礎論、場の量子論、量子物理学特論
連絡先
桂キャンパスC3棟 d1S03
E-mail: miyadera@* (スパム対策のためメールアドレスを省略しております。@の後にはnucleng.kyoto-u.ac.jpを追加して下さい。)
http://miyaderatakayuki.wixsite.com/home
小暮 兼三 ( Kenzo OGURE )
助教(工学研究科)
研究テーマ
- 素粒子と宇宙: 初期宇宙と素粒子(バリオン数生成、ダーク マター)、有限温度場の理論、ニュートリノ振動
- 場の理論におけるソリトン: トポロジカルソリトン、ノントポロジカルソリトン
- ランダム系と情報理論: スピングラス、レプリカ法、情報理論への統計的手法の応用
連絡先
桂キャンパス C3棟 d1S02号室
TEL: 075-383-3909
FAX: 075-383-3909
E-mail:ogure@* (スパム対策のためメールアドレスを省略しております。@の後にはnucleng.kyoto-u.ac.jpを追加して下さい。)
研究テーマ・開発紹介
量子測定理論:相容れない操作の存在
量子論と古典論の大きな違いは、測定という最も原始的な操作においてあらわれています。古典論では原理的にはいかなる物理量も同時に測定が可能であるのに対し、量子論では非可換な物理量どうしは同時に測定することはできません。この不可能性を任意の物理量(POVM)どうしについて定量化したもの(不確定性関係)を、我々は導きました。また、物理量とそれを測定する際の状態変化の関係を順序集合の観点から調べ、情報撹乱定理(多くの情報を与える物理量を測定する際には撹乱が大きいこと)の質的な表現方法を見つけました。卒業研究では不確定性関係の応用に関する研究も行っています。
量子情報理論:量子性を利用する
不確定性関係では量子論における不可能性が問題となりました。ところで、盗聴者にとって何かができないことは、正規ユーザにとって安全な通信が可能となることを示唆しています。このように積極的に量子性を情報過程に適用し、何ができるようになるのかを考える分野が量子情報理論です。我々は、情報を定義する際に確率を用いない量子Kolmogorov複雑性と呼ばれる量を用いて量子暗号の安全性を議論しました。最近の修士論文では、より具体的なプロトコルの安全性解析なども行っています。
量子論基礎:量子論を特徴づける
近年、量子論と古典論を含む大きな枠組みを研究し、量子論や古典論の特徴は一体何か、なぜ量子論が我々の世界を記述しているのか、を探る研究が盛んになっています。von Neumann は彼自身のHilbert空間ありきの定式化を好まず、何故そのような定式化があらわれるのかを探るために、質問のなす代数構造に着目し、それが(分配則を満たさない)束をなすことを示しました。我々は、この観点から最も自然な代数 であるorthoalgebraを取り上げ、これが状態のコピーを許すのであればBoole代数に他ならないことを示しました。この結果は、これは量子論におけるコピー不可能性定理の一般化となっています 。
量子論の展開
量子カオス・量子非平衡系、量子開放系などの研究も行ってきました。