量子ビーム科学講座

量子ビームによるミクロ世界の探求と先端ナノテクノロジーの構築

物質が持つ固有の性質や特徴は、物質内の原子や分子の挙動や反応によって基本的に支配されています。そのようなナノスケ-ル領域での物質の性質を、量子ビームを用いて正確に理解するとともに、量子ビームを応用した先端ナノテクテクノロジーを生み出すことで、生命科学や物質科学、宇宙科学における量子ビーム科学の展開を目指しています。

本研究室には、イオン、電子、光子など制御性の良い多機能の量子ビームを発生する3台の加速器や各種レーザー装置が設置されており、上記の観点に立った教育研究を推進しています。

教員

斉藤 学 ( Manabu SAITO )

斉藤 学教授(工学研究科)

研究テーマ

イオン蓄積リングやイオンビームトラップに閉じ込めた高分子イオンビームに量子ビームを合流させる独特な手法を用いて、励起高分子イオンの脱励起現象を調べています。また、デスクトップ静電型イオンビームトラップの開発と、それを用いて準安定状態イオンの禁制遷移寿命測定の精密化を目指しています。また最近では、星間分子の生成過程に重要な励起分子イオンの再帰蛍光を捉えることに挑戦しています。

主な担当講義

量子反応基礎論、基礎量子科学、応用電磁気学

連絡先

宇治キャンパス 総合研究実験棟2F 210号室,TEL&FAX: 0774-38-3970
桂キャンパス C3棟 d1S04号室,TEL: 075-383-3904
E-mail: saito@* (スパム対策のためメールアドレスを省略しております。@の後にはnucleng.kyoto-u.ac.jpを追加して下さい。)

土田 秀次 ( Hidetsugu TSUCHIDA )

土田 秀次准教授(工学研究科)

研究テーマ

加速器から得られる粒子線と物質(原子分子、クラスター、液体、固体)との衝突反応過程に関する実験的研究を行っています。衝突によって生じる非平衡反応をリアルタイムで観測し、その物理機構を解明することを目的としています。また、分子・クラスタービームの空間制御に関する新たな方法についての研究も行っています。

主な担当講義

放射線計測学、加速器工学、医学放射線計測学

連絡先

宇治キャンパス 総合研究実験棟2F 214号室
TEL: 0774-38-3974 (PHS: 0774-38-4895)
FAX: 0774-38-3974

桂キャンパス C3棟 d1N05号室
TEL: 075-383-3929

E-mail: tsuchida@* (スパム対策のためメールアドレスを省略しております。@の後にはnucleng.kyoto-u.ac.jpを追加して下さい。)

松尾 二郎 ( Jiro MATSUO )

松尾 二郎准教授(工学研究科)

研究テーマ

量子ビームが創り出すナノスケールの非平衡場で起こる新規現象の探索と、原子・分子の精度での制御が必要な先端技術への応用研究も進めています。

主な担当講義

電磁気学続論、原子物理学、量子反応基礎論、量子科学2

連絡先

宇治キャンパス 総合研究実験1号棟 2階221号室
TEL: 0774-38-3973
FAX: 0774-38-3978
E-mail: matsuo.jiro.7s@* (スパム対策のためメールアドレスを省略しております。@の後にはkyoto-u.ac.jpを追加して下さい。)
先端ビーム応用グループ

間嶋 拓也 ( Takuya MAJIMA )

間嶋 拓也准教授(工学研究科)

研究テーマ

量子ビーム(主に加速器からの高エネルギーイオンビーム)を用いた原子衝突物理や放射線物理,放射線化学に関する実験的研究を行っています. 最近では,イオンビーム分析を用いた応用研究にも参画しています.従来にはない新奇な実験技術や測定システムを構築するというスタイルで,未知の衝突反応現象の探索やそのメカニズムの解明,新たな分析技術の開発を目指しています.

主な担当講義

原子物理学、基礎量子科学、量子科学

連絡先

宇治キャンパス 総合研究実験棟2F 212号室,TEL: 0774-38-3972
桂キャンパス C3棟 d1N06号室,TEL: 075-383-3931
E-mail: majima@* (スパム対策のためメールアドレスを省略しております。@の後にはnucleng.kyoto-u.ac.jpを追加して下さい。)

京都大学 教育研究活動データベース
researchmap

瀬木 利夫 ( Toshio SEKI )

瀬木 利夫講師(工学研究科)

研究テーマ

量子ビームを用いた新しい表面加工プロセスや評価技術の開拓。クラスターイオンビームを用いた多原子衝突系の照射効果の研究。

連絡先

宇治キャンパス 総合研究実験1号棟 2階211号室
TEL: 0774-38-3977
FAX: 0774-38-3978
E-mail: seki.toshio.7r@* (スパム対策のためメールアドレスを省略しております。@の後にはkyoto-u.ac.jpを追加して下さい。)
先端ビーム応用グループ
個人ページ

今井 誠 ( Makoto IMAI )

今井 誠助教(工学研究科)

研究テーマ

人類は、原子・分子、原子核、素粒子とより小さな(基本的な)粒子を研究対象に加えて科学を発展させてきましたが、我々が日常経験する世の中の物質のいろいろな性質を決めているのは、原子・分子スケールでの科学法則です。世界が凍り付くことなく我々が活動できるのは、原子や分子がエネルギーを得て運動しているからであり、運動している原子・分子同士が衝突する現象は、この宇宙・世界を理解する鍵となります。原子・分子をビーム化して実験をおこない、これら法則とその利用法を探ります。

連絡先

桂キャンパス C3棟 d1S05号室
TEL: 075-383-3905
E-mail: imai@* (スパム対策のためメールアドレスを省略しております。@の後にはnucleng.kyoto-u.ac.jpを追加して下さい。)

研究テーマ・開発紹介

高速イオンビームの生体物質に対する照射効果

精密に制御した量子ビームを様々な物質と相互作用させることで、ナノスケールで起きる複雑な現象の探求から、生命科学や医療への応用までを考えた実験研究を行っています。

中でも、高速イオンの照射によって液体分子や液体に含まれる生体分子が損傷するメカニズムや、さらに様々な別種の分子が照射によって出現する機構の解明を、世界に先駆けて進めています。この研究では、高速イオンからのエネルギー付与によって生体中で起こる特異な分子損傷ダイナミクスを調べることが可能であり、放射線によるがん治療、宇宙環境における人体の放射線影響、植物の品種改良などを行う際の物理学的基礎データを提供しています。

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図-1 高速炭素イオンとミクロンサイズ液滴との衝突:様々な反応分子や分子イオンが出現し、その種類と生成数を装置で識別する

量子ビームによる革新的ナノプロセス・評価技術の開拓

革新的な量子ビームを用い、ナノテクノロジーや生命科学分野で使われる新しいプロセス技術、評価、シミュレーション技術の研究開発を行っています。

例えば、多数の原子集団であるクラスターのイオン、数MeVという非常に大きなエネルギーを持った重粒子などの量子ビームの持つ特異な性質を利用することで、次世代の微細デバイスに用いられるナノレベルの加工、生体材料の分子イメージング、大気圧下固液界面質量分析が可能となります。

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図-2 MeVイオンによる大気圧下固液界面質量分析装置と概念図

イオンビームトラップ技術:原子分子構造の精密測定から宇宙探訪へ

原子や分子の内部構造は量子力学によって支配されており、これまでの多様な研究からその詳細が明らかにされてきています。今日の科学技術の発展は、半導体や量子情報技術の開発などに見られるように、量子レベルでの基礎法則の正確な理解なくしては語ることができません。本研究室では、原子分子の量子レベルでの性質から生じる新奇な現象を精密に捉えることで、原子分子の構造を正確に理解する研究を進めています。

中でも、イオンビームを何もない限られた空間に閉じ込めるイオンビームトラップ装置を開発してきました。この装置を使って、外界からの影響によって乱されやすく且つ稀にしか生じない量子レベル現象の長時間観測を可能にしています。最近では、生命にとって重要な有機分子が宇宙空間で壊れずに存在していることを説明する新たな分子蛍光現象を捉えました。

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図-3 イオンビームトラップ:孤立ナフタレンイオンからの新奇な蛍光放出を捉えた時間スペクトル

核融合プラズマ中での原子衝突機構の解明と応用

イオンビームが原子、分子、固体、表面などのターゲットに衝突すると、イオン、ターゲット内部の構造変化を伴う諸過程が、確率的かつ競合的に起こります。この過程は、中間状態の生成と、それによる更なる構造変化など、衝突時に特有のダイナミック(動的)な物理現象を数多く含み、静的な研究からは得られない知識を与えてくれるものです。

実験により、原子・分子が関わるナノスケールレベルでのあらゆる事象を考察するための基本データが得られます。

現在集中して取り組んでいるのは、将来の核融合炉心でプラズマを継続燃焼させるために不可欠な、燃料供給、不純物・燃焼灰除去、プラズマ計測診断に深くかかわる衝突過程です。