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量子理工学講座

ナノスケールでの原子や分子の性質を正確に理解することなくして21世紀の真の先端科学はあり得ません。現在様々に展開されている物質科学や生命科学においても例外では無く、原子レベルでの物質現象の解明は益々重要視されてきています。

本研究室では、イオンや電子およびX線やレーザーなど極めて機能性の高い量子ビームの活用こそがその実現に至る最も優れた研究手法であると考えます。

具体的には、量子ビームによってナノスケール領域に誘起される極限的な環境(超高温、超高圧、高エネルギ密度)の下で起こる様々な量子現象を精密に観測し、新しい法則性の発見やその応用としての高付加価値ナノ物性を備えた新材料創製など、循環型社会の確立につながる創造的な研究をおこなっています。

研究テーマ・開発紹介

高速重イオン衝突によるC60分子の電離と分解メカニズムの研究

C60分子は直径0.7nmの球形で、サッカーボールと呼ばれています。60個の原子同士は強い共有結合でつながっており、非常に安定な構造をしています。

このような分子に高速のイオンが衝突するとイオンからエネルギ-をもらい、沢山の電子が放出したり、あるいは安定性が壊れて分解したりします。衝突で生成される炭素クラスタ-イオンを飛行時間法によって精密に測定することによって、電離過程や解離・分解過程の詳細を知ることができます。

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図-1 炭素イオン衝突によるC60分解イオン片の質量分布

イオン照射法によるC60薄膜のポリマー化と放出フラーレンイオンの角度・エネルギ分布

Si(111)面上に作製したC60薄膜は面心立方状の結晶状態を形成します。しかし分子同士はファンデルワールス力による弱い結合のため薄膜材料としての実用性に欠けています。

この欠陥を取り除き新しい素材創製を目的としてイオン照射法によるポリマー化の研究をおこなっています。

また、イオン照射によってスパッタリングされるイオンの中にはC64や(C60)2のような特異なクラスタ-イオンが観測されます。図2はそのようなイオンの放出角度とエネルギ-分布についての測定例です。

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図-2 4MeVのSiイオンによる薄膜C60から放出される2次イオンの角度とエネルギ-分布

 量子ビームによる革新的ナノプロセス・評価技術の開拓

多数の原子集団であるクラスターのイオン、10MeVという非常に大きなエネルギーを持った重粒子、パルスの幅が1p秒以下の極短パルスのレーザーなどの様々な量子ビームを利用することにより、ナノテクノロジーや生命科学分野で使われる新しいプロセス技術、評価、シミュレーション技術の研究開発を行っています。量子ビームの持つ特異な性質を利用することで、これまではできなかった新しいナノプロセスや評価を実現することができます。例えば、次世代の微細デバイスに用いられるナノレベルの加工技術、生体材料の分子イメージング、さらには物質中の電子応答や格子振動などの超高速で起こる物理現象の観測もできます。

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図-3 量子ビームを用いた新しいナノプロセス・評価の例