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量子リサイクル工学分野

ランタニド及びアクチニドと呼ばれる「f―電子軌道」を有する重い元素は、様々な特徴的化学挙動を示します。これらの元素が、水溶液、濃厚塩溶液、溶融塩、液体金属等の系において示す化学的特性、同位体化学効果、生体との相互作用等を、電気化学分析、分光分析、クロマトグラフィー、質量分析、放射化学的手法等を用いて研究しています。

これら元素に関わる化学的効果やそのメカニズムを解明した上で、新たな分離精製法やリサイクル手法に展開することを目指しています。

工学開発の視点からは、原子力・核燃料サイクルでの使用済燃料の再処理や放射性廃棄物処理の高度化等の、元素リサイクルや化学処理に関わるプロセスの開発を目指しています。

教員

上原 章寛 ( Akihiro UEHARA )

上原 章寛助教(原子炉実験所)

研究テーマ

アクチニドイオンの分離に関する溶液化学的基礎研究

連絡先

原子炉実験所 研究棟 2階223号室
TEL: 072-451-2454
FAX: 072-451-2634
E-mail: auehara@* (スパム対策のためメールアドレスを省略しております。@の後にはrri.kyoto-u.ac.jpを追加して下さい。)

研究テーマ・開発紹介

高温融体および水溶液中の溶存元素の化学的特性とメカニズムの解明

高温融体 (溶融塩、溶融金属)および常温媒体 (水、有機溶媒、常温溶融塩、水和物溶融体等)中における、アクチニドやランタニド元素の溶存状態や酸化還元反応について、電気化学的手法や分光学的手法を用いて研究しています。これらの元素の各媒質中での化学的な相互作用や特殊な反応について知ることが出来ます。

図-1は、不活性ガス雰囲気グローブボックス内に設置された溶融塩電解実験用の装置です。溶融塩試料を含む石英製の電解セルに外部から光を通し、紫外可視吸光分光分析によって、数百℃の溶融塩中での各元素の溶存状態を分析できるようになっています。

図-2は、ネプツニウムを含む約650℃のアルカリ溶融塩の写真です。

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図-1 溶融塩電解実験用装置

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図-2 塩化ネプツニウムが溶存するアルカリ溶融塩

核燃料や放射性廃棄物の先進的な化学処理法に関わる基礎及び工学研究

将来の核燃料サイクルに利用できるような、核分裂生成物やアクチニドの先進的な化学処理法を研究しています。一例として、濃厚水溶液を用いたウランの析出法に関する研究を紹介します。一般に、水溶液に溶存するウラニルイオンを二酸化ウランに還元することは、水の分解反応が起こるため難しいのですが、水和物溶融体という濃厚電解質溶液を用いると二酸化ウランを還元回収することが可能となります。

図-3は、塩化ウラニルの濃厚水溶液です。

図-4は、水和物溶融体を用いて還元回収した二酸化ウランです。

この他、湿式再処理法に関する核種分配挙動を研究しています。また、放射性核種の消滅を目指した「群分離核種変換技術」の基礎データとして必要な中性子核反応断面積を測定する実験を、放射化学的な手法により支援しています。

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図-3 塩化ウラニルの濃厚溶液

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図-4 還元回収した二酸化ウラン。

化学分配平衡に現れる特異な同位体効果のメカニズムの解明

同位体どうしの化学的な性質は、わずかながら異なります。この化学的な性質の違いを利用した同位体分離法に化学交換法というものがあります。化学交換法には交換蒸留法やイオン交換法などがあります。

クラウンエーテルと呼ばれる大環状化合物を用いた化学交換系では、大きな同位体効果が観測されることが知られています。私たちは大環状化合物などを用いた化学交換系での同位体効果を研究しており、その研究から、色々な元素での特異な同位体効果(質量にかかわらない同位体効果)を発見しています。 現在、特異な同位体効果の原因は、核の体積や、核スピンの影響であると言われています。

図5はカドミウムの天然同位体を実験的に同位体濃縮した際の同位体濃縮係数を示したもので、ある同位体ペアで規格化し、質量にかかわらない同位体効果を評価したものです。同様に核の平均自乗半径を規格化したものを示しました。両プロファイルが酷似していることからも、質量に関わらない同位体効果の発現メカニズムに原子核の大きさや形が関与していることが伺えます。

地球化学の分野では、隕石中に特異的な同位体比変動を示すものがありますが、この同位体比変動のプロファイルが私たちの研究している質量に関わらない同位体効果のプロファイルに似ていることは興味深く、そのような天然試料中での同位体分別と化学同位体効果との相関も研究しています。

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図-5 カドミウムの同位体濃縮挙動