教育方針

教育研究の高度化・多様化に対応するため、体系的なカリキュラムを編成するとともに、先端的な内容を含む講義を実施しています。また、研究指導においては、ミクロの視点からの高度な分析能力に加えて、問題の発見とその解決に不可欠な総合的思考能力の育成を目指しています。

さらに、少人数ゼミや研究発表会、学会発表を通して、ディスカッション能力やプレゼンテーション能力の養成を図るとともに、企業などで活躍する社会人の実体験にもとづく講義やインターンシップを有効に利用して、目的意識や問題解決能力の涵養を図っています。

 

福島原発事故をふまえた専攻の教育について(平成24年5月28日)

平成23年3月11日に発生した東日本大震災により,東京電力福島第1原子力発電所において全電源が喪失し,大量の放射性物質が放出される事故が引き起こされた.その結果,多くの住民が避難を余儀なくされ,現在に至っている.その事故原因については,複数の事故調査委員会が調査中であるが,平成23年12月に作成された政府事故調査委員会中間報告においては,津波による過酷事故対策の欠如,複合災害という視点の欠如,全体像を見る視点の欠如が指摘されている.

京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻は,創設以来原子力関係の研究者・技術者を育成してきており,原子力分野の研究,開発,運用,管理等に多くの卒業生・修了生が従事している.今回の事故を受けて,これまでの教育に問題点はないか,これからの教育をさらに改善するための方策はあるかを検討するため,将来検討委員会が開催され,議論を進めてきた.

平成23年度に物理工学科原子核工学コース(学部)および原子核工学専攻(大学院)における講義・演習等で取り上げられた安全に関する項目を別表1に示す.従来から多くの項目が取り上げられてきたが,今回の事故に関連して赤字で記載の項目が新たに付け加えられた.政府事故調査委員会中間報告で指摘されている複合災害の観点を含めて全体像を見る視点の欠如に対しては,放射線,放射能,原子炉等の基礎知識に加えて,広い視野をもち,高い倫理性を備えた人材の育成が必要である.そのような人材の育成は,これまでも原子核工学専攻の教育の目標であったが, 広い視野をもつための教育が十分行われているとはいえなかった.これらの点について具体的な改善策の議論を行った結果,以下の項目について改善案の検討を進め,可能であれば今年度から実施することになった.

  1. 原子力安全工学における過酷事故に関する教育
  2. 原子核工学序論における事故事例検討に基づく工学倫理教育
  3. 基礎量子エネルギー工学におけるリスクマネージメントに関する教育
  4. 原子核工学セミナーにおけるエネルギー問題等のグループ研究

別表1