在学生・卒業生からのメッセージ

徐々に記事の数を増やしていく予定です。自発的なご寄稿もお待ちしています。

工学部・大学院工学研究科ウェブサイト「博士学位取得者からのメッセージ」より

濱村一航2020年3月 博士後期課程修了

野村真史2018年3月 博士後期課程修了

 

高安正治

takayasu昭和45年3月 原子核工学科卒
平成12年3月 大学院エネルギ-科学研究科エネルギ-社会・環境科学専攻後期博士課程 単位取得修了
掲載当時の所属: (株)原子力エンジニアリング

35年前に原子核工学科を卒業しました。現在の原子力は大学で炉心の設計や核燃料サイクルの基礎を学んだ方々が支えて来たのは間違いの無いところです。その方々は今や定年を迎えられ世代交代の真っ只中にあります。

原子力の課題は「安全運転の継続」と「理解の促進」です。前者は今までの原子炉の設計・運転・保修技術の理論と経験を伝える必要がありますが、大学でその理論の教育を行うことが必須であると考えています。

つい最近、後期の「原子核工学特論」で修士1回生を対象に「原子炉の炉心と燃料の設計」の講義をしました。その際、与えた課題の学生のレポ-トに設計の詳細を知りたいとの希望が書かれていたことに頼もしく感じました。理論を学ぶと安全性向上に結びつく研究課題が見つかると思います。また原子力の理解を得るには原子力は特殊な分野ではなく社会に定着している医療や航空と同じように人類に多大なメリットを提供する反面、死に直結するリスクを持つと言う特性からリスクとその低減化について他分野における評価方法を我々従事者が参考にし、公平・謙虚に説明するべきであると考えています。皆さんの今後の御研鑽をお祈りします。

吉原文樹

yoshihara-rkn平成15年3月 博士後期課程修了
掲載当時の所属:理化学研究所 ポスドク
(現所属:東京理科大学・教授,情報通信研究機構・主任研究員

私は平成15年3月に原子核工学専攻博士課程を卒業して、現在、独立行政法人理化学研究所で超伝導体を用いた量子ビットの研究をしています。自分自身はまだ実績を上げたわけではないのですが、今の研究室は世界をリードするような研究を行っています。

このようなすばらしい研究室の一員となることができたことは運が良かった事もありますが、原子核工学専攻時代に幅広いことを学び、アンテナを張ることが出来たからだと確信しています。

原子核工学ときくと応用が利かないなど悪い意味でのマニアックなイメージがありますが、実際には色々な分野の知識を得ることが出来るところです。例えば、修士の授業では、量子力学、材料工学、統計力学、流体力学、計算機工学などの様々な分野の基礎的なことが勉強できるほか、放射線計測学、加速器工学、中性子工学、原子炉物理学など、原子核らしいこともやります。私の研究テーマは放射線検出器の開発でしたが、超伝導体の薄膜を用いた素子の設計、製作から、検出器の冷却、X線の照射、信号測定およびその解析など、様々なことを行い、今の研究でもその経験や知識が大いに役に立っています。

松永大輔

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平成15年3月 修士課程修了
掲載当時の所属:堀場製作所 半導体・科学システム統括

大学院では極低温で動作する半導体検出器の開発を行っていました。放射線計測の勉強をするために、原子核工学専攻の講義を受けていましたが、半導体そのものの物理も理解する必要があり、電気電子工学専攻の講義も聴きにいったり、神野先生に紹介していただいて、専門の先生に 質問に行った事もありました。大学院では自分のやりたいことに合わせた講義を聴講することができましたので、学部の時に 比べて良く身につきましたし、楽しかったです。

現在は計測器メーカーに勤めており、装置の原理開発、実験、アプリケーションを担当しております。メーカーでは機械設計、電気、ソフト、実験(アプリケーション)をそれぞれ各専門の人間が受け持って仕事を行います。大学院で学んだことは基礎ではありますが、専門の分野につながっております。少し突き詰めれば、会社内で第一人者になることも可能です。

大学院で自分の研究に専念したことは 会社での仕事の基礎となっております。学部の時と違い、研究に没頭できる環境があります。また、大学院時代に出会った方々は自分にとって非常に大切な先生方ばかりです。

前瀧聡

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平成15年3月 修士課程修了
掲載当時の所属:キヤノン(株) レンズ開発センター

私は大学院では放射線の医療応用であるCTの低被曝化の研究を行っていて、原子核工学専攻の講義では放射線計測を始め多くの講義を受けました。その中で研究の基礎となる放射線に関する事はもちろん、物理や数学などについても学ぶことができました。また私の在籍していた研究室では放射線検出器の開発や加速器を用いた研究など幅広い研究が行われていたため、半導体や材料に関することなど幅広い知識を得ることができました。現在は光学メーカーに勤めており、光学関連の開発を行っています。放射線と光は親戚のようなものですが、放射線に関する知識がそのまま使えるということはありません。しかし、大学院で得た基本的な考え方は多くの場合に使えます。また会社では既存の技術でも新たな視点を持って捉えると、「おもしろい発見」をすることがあります。私が大学院で得た幅広い知識はこの「おもしろい発見」の種となっており大いに役立っています。原子核工学専攻というと専門的な知識に特化したものであると思われがちですが、実際には幅広い研究を行っており、自分の幅を広げるのに適した所でした。また先生方を始め原子核工学専攻の方々は皆刺激的な方々で、常に良い刺激を受けながら研究することができました。